世の中にはすごい人がいるもんだ
「パラダイス山元の飛行機の乗り方」という本があります。なんでも1年間に1,022回も飛行機に乗った方だそうで、この本に「流氷タッチ」なるものが書かれていました。
羽田から1時間45分で、一面流氷に覆い尽くされたオホーツク海を眼下に収めることができるフライト(『パラダイス山元の飛行機の乗り方』パラダイス山元著)
ちなみに「タッチ」というのはあだち充の名作野球漫画ではありません。飛行機が一旦着陸してすぐに離陸していく「タッチ&ゴー」から来ていて、旅客者が空港について、観光もせずにスグにまた飛行機に乗ることを言います。
この本を読んだのは2月中旬で、直近で行けそうな日程だと3月1日だから、「流氷サイト」で調べてみると、まだ大丈夫そう。私も流氷が見たくなって、2016年3月1日のNH 0375便、東京羽田ーオホーツク紋別を予約しました。
- 3月 1日(火) ANA 672 広島(07:40) – 東京(羽田)(09:00)
- 3月 1日(火) ANA 375 東京(羽田)(10:25) – オホーツク紋別(12:15)
- 3月 1日(火) ANA 376 オホーツク紋別(13:00) – 東京(羽田)(14:55)
ところが、前日の2月29日のニュースでは…
急速に発達する低気圧の接近で北海道は29日、暴風雪で大荒れとなった。荒天は1日まで続き、特に日本海側南部の後志、檜山地方で数年に1度の猛吹雪の恐れがある。札幌管区気象台は不要な外出を控えるよう呼び掛けている。(毎日新聞ニュース)
やっぱり…
案の定、2月29日午後6時には、欠航のお知らせメールが…
03月01日ANA375便
東京/羽田10:25発 – オホーツク紋別12:15着は欠航となりました。03月01日ANA376便
オホーツク紋別13:00発 – 東京/羽田14:55着は欠航となりました。
がーん、3月2日には東京で所用もあったのでとりあえず羽田まで行くことにしました。羽田空港についたもののやはりオホーツク紋別空港行きは(当たり前ですが)出ない。ぼーっとしていると60過ぎのおじさんが声をかけてきました。
(おじさん)「あなたも、乗れなかったの?」
(私) 「そうなんです。オホーツク紋別まで行く予定だったんですが。」
(おじさん)「俺もさぁ、スキーのインストラクターの研修で札幌に行く予定だったんだけどな、途中で飛行機が引き返して来ちゃったよ。」
この日は、欠航した便も多かったようです。これは、このままでは帰れないと思って3月4日に予約をしました。
- 3月 4日(金) ANA 375 東京(羽田)(10:25) – オホーツク紋別(12:15)
- 3月 4日(金) ANA 376 オホーツク紋別(13:00) – 東京(羽田)(14:55)
3月4日、東京は晴れ
3日前の悪天候がウソのように晴れて、着々と離陸の準備が進んでいます。さあ、流氷タッチの始まりです。

羽田上空から東京ディズニーリゾートが綺麗に見えます。

猪苗代湖上空です。

津軽海峡を越えていきます。

ついに流氷が
流氷が見えてきました。滑走路も。でも、私は左側の席に座っています。このまま行くと、右側の席が海側になり、私の席は山側(涙)。

ちらっと、流氷の海が見えたものの…これだけ???右側の席の人たちは、「流氷なんか見飽きてるぜ」と言わんばかりの無関心さを全身にまとって新聞を読んだりしてます。ベルト着用サインさえ消えていれば、土下座して席を替わってもらうところですが、飛行機は既に着陸態勢。「実は滑走路の上空を過ぎ去って大きく旋回してから、反対側から着陸するんじゃない?」という微炭酸のあぶくのように淡い私の期待を裏切って、飛行機は無事に着陸しました。あ〜あ。
帰りの便の席が心配になってきました。飛行機は風に向かって着陸や離陸をします。ということは、風向きが同じであれば、飛行機は同じ方向へ離陸するはずなので、帰りの便は右側の席に変更しましょう。幸い、席は空いていました。
オホーツク紋別空港は、ボーディング・ブリッジがないのでタラップ車が迎えに来てくれます。

冷たい空気を頬に感じながら、ターミナルビルまで歩きます。

滞在時間は45分間!です。本当は海岸まで行きたかったのですが、ウロウロしている間に帰りの便が出ちゃったら大変なので、我慢してターミナルビル周辺をお散歩です。

クリオネのオブジェと氷の細工。かわいい。

屋上に展望デッキがあります。見えるのはさっき乗ってきたB787-800だけです。というのも、ここ、オホーツク紋別空港は羽田からの(同じ機材を使った)往復便しかありません。展望デッキでは私の他に1人の青年が飛行機の写真を取っていました。ひょっとして、この青年も「流氷タッチ」か?と思いましたが、残念ながら帰りの便にはいませんでした。もうしそうであれば、話が弾んだのに。

待合室で待ちます。しまった、パラダイス山元さんオススメの高橋製菓の「ビタミンカステラ」(84円)を買うのを忘れた。
今度こそ
「今度は流氷がしっかりと見られますように」と願を掛けながら搭乗して、離陸をまちます。
座席にキャビン・アテンダントさんが来られて「先ほど機長に確認したのですが、今日は着陸時とは逆の方向へ離陸するそうです。もしよろしければ、流氷が見られる右側の席にお移りになりませんか。」
「え”〜っ!!!そうなんですか?!ありがとうございます。早速替わります。」
実は、行きの便でキャビン・アテンダントさんに流氷を見に来たことを話していたんです。それで、わざわざ機長に離陸の方向を確認してくださっていたんです。帰りの便のプレミアム・シートは私1人だけで、貸切状態でした。もしも、キャビン・アテンダントさんが離陸の方向を確認して下さらなかったら、私はギリギリと歯ぎしりをしながら、シートベルトに縛り付けられて悶絶してたことでしょう。席はすっかり空いているのに、流氷が見られないなんて…ね。
キャビン・アテンダントさんのお心遣いに深謝しながら窓の外をみると

地上のスタッフの皆さまが手を振ってくださっています。この「グッバイ・ウェーブ」はANAから始まったんだそうです。沖縄の整備士の方が始めて、ANA全社に拡がって、今では世界中に拡がっているそうです。*1いつ見ても、ウルっと来ますね。(この時は一層思いました。)私も思いっきり手を振り返します。「また、来ますよ〜」

いよいよ離陸です。わぁ、見えた、綺麗な青い海と白い流氷。
ちなみに、奥に白く見えるのが流氷です。この時期の沖縄の海より青い!

キャビン・アテンダントさんから離陸後に右に旋回することを伺っていたので、それまでしっかりと大自然の美しいコントラストを楽しむことができました。
なにせ貸切状態なので、機内食を楽しみながらキャビン・アテンダントさんといろいろお話しましたが、この流氷タッチをする人は珍しいようですね。もっともなことですが。

最後にメッセージカードをいただきました。
今日は往復共にご搭乗いただきましてありがとうございました。
少しですが、機内からも流氷を観ていただくことができて本当に良かったです。◯◯◯様のフライト日程が変更になったことで今日はご一緒させていただくことができ、私どもも楽しい時間を共有させていただくことができました…
ウルウル…こうようにメッセージカードをいただくことも空旅の醍醐味ですね。流氷タッチに行ってよかったと心の底から思いました。
じゃぁ、また!

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*1:『ANAが大切にしている習慣』(ANAビジネスソリューション著)
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