Universeの歌詞についてふと考えてみた。 Official髭男dism ヒゲダン

のび太の宇宙小戦争

2021年3月に公開される「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021」の主題歌は、Official髭男dismが担当します。この歌がとても素敵で、歌詞も曲も演奏も練りに練られていて極上のものになっているんですね。

曲や演奏については、実際に聴いて味わっていただくとして、ここでは、その歌詞がどんなに素晴らしいかについて、歌詞ついて思ったことを書きたいと思います。

Universeの3つの世界

Universe(ユニバース)は、3つの世界のパートからできていると思います。まず最初はのび太くんの普段の世界。

のび太くんの普段の世界

ドラえもんには大きく分けて「短編のドラえもん」と「大長編ドラえもん」があります。短編のドラえもんはテレビ放送になって、大長編ドラえもんが映画になります。

短編での、のび太くんは、日常生活の中で困ったときにドラえもんに助けを求めて道具で解決します。新たな問題が出てきてしまうこともあって、それがオチになったりします。

長編での、のび太くんは冒険に出かけるんですよね。普段の世界で過ごしていたところに何らかの出会いがあって、冒険にでかけて成長して帰ってくる。神話の法則というのがありますが、そんなお話が大長編にも多いです。

神話の法則 夢を語る技術

Universeの1番の歌詞は、冒険に出かける前ののび太くん(あるいは短編ののび太くん)の世界だと思います。

Universe歌詞

ブランコに乗りながら、自分のことを考えているのび太くんの姿が目に浮かびます。

Official髭男dismの藤原聡さんの歌は、韻を踏むことでも有名ですよね。Aメロでは「ア」の音で終わる脚韻を踏んでいます。(どうとか、どうとか、考えてた、まぶたの裏、ハテナ)

Universe歌詞

こちらはすごい数の「イ」で韻を踏んでいます。(嬉しい、悲しい、どっち?、正しい、間違い、どっち?、公園に、ひとりぼっち、解答用紙)そして、「エ」音。(急かされ、見つめ)

「伸びた」がのび太なのは、歌い方からもわかりますね。

Universe歌詞

テストの点数はいつも0点ののび太くん。空を見上げれば満天の星だけど、満点と満天をかけていますね。満天の星、それは肯定感いっぱいの世界です。

惑星は「なぜ、惑(まど)う星と書くのか」大人になってずいぶんしてから知りました。星座を構成する恒星たちは、遠く離れているために地球の自転と公転によって動いているように見え、そのために同じような軌道になります。みんな同じように動くんですね。

一方、(太陽系の)惑星たちは地球から近いので、惑星の公転と地球の自転や公転と組み合わさった複雑な軌道を描きます。それでジグザクに動いているように見える惑星は「惑う星」と呼ばれるんだそうです。

だからUniverseでも「彷徨(さまよ)ってないで」って呼びかけられているんですね。

ここで、呼びかけているのはドラえもん、惑星はのび太くんかな。

野に咲くユニバースって素敵ですよね。のび太くんの姓は「野比」です。それもあってこの言葉が選ばれているのかもしれません。ユニバースはリトルスターウォーズの舞台。世界というイメージもありますので、広い野原に咲くひとつだけの世界・宇宙のイメージだと思います。

のび太くんの冒険の世界

2番ではのび太くんの冒険の世界が綴られます。

Universe歌詞

1番のAメロを踏まえながら、冒険の世界へと旅立っていきます。映画や原作の内容に沿いながら、もっと広く多くの人々が共感できる言葉が選ばれていると思います。

ここでも「ア」音での脚韻になってますね。(こうとか、こうとか、侵略者は、だとか、だとか、叫んだ)聴いててとっても気持ちいいです。

Universe歌詞

ここでとても素敵なのが、困難や危険に立ち向かうかどうか「本当はわかっているんだけどね」というところ。そう、大長編ののび太くんは、普段とは違うのです。ちょっとかっこいいのです。友達を見捨てるなんてことは決して絶対にしません。この部分、藤原聡さんの、藤子・F・不二雄先生へのリスペクトが深く感じられます。ここだけじゃないんだけどね。

Official髭男dismの世界・あなたの世界

Universe歌詞

2番のサビの部分ですが、ここからOfficial髭男dismの世界になっていきます。のび太くんの世界と重なっていきます。

0点のままの心…何もできないと思ってしまっていたけど、その時が来て、舞台が始まって、まるでバンドがステージに立つかのような歌詞です。ひょっとしたら、コロナ禍のためにライブ・コンサートの延期を余儀なくされ、無観客でのライブ配信を行ったときのことかもしれません。拍手も声もなく未来はただ流れていったのかもしれません。

韻の話ですが、1番が「涙とミステイク」で、2番が「世界は回っていく」で「テイク」で韻を踏んでいます。宇宙戦争にふさわしい壮大な韻の踏み方ですね。

Universe歌詞

Cメロでは、Official髭男dismとリスナーであるあなたの世界が描かれていきます。

掌が茶色くなるのは、長い時間ブランコを漕ぎ続けていたためかもしれませんし、これまでの人生の長さのためかもしれません。

面倒と幸せを行ったり来たりするのも、のび太くんの世界を感じさせるのと同時に、あなたの人生でいろんな出来事があったことを彷彿とさせます。行ったり来たりはブランコですね。

「ジグザグに散らばる僕の星座」のあたりからピコピコという宇宙サウンドが左右に駆け巡ります。これはパピ(ピリカ星の大統領)が乗った宇宙船の音でしょうか。楽器の音で聴こえにくいのですが、こんな遊び心もたっぷりですね。

散らばった星座、悩み惑いながら重ねた日々、忘れてしまった過去からやってくるのは。。。(下に続きます。)

Universe歌詞

最後のサビで、やってきたのは流星です。これは、きっと、ドラえもんとのび太くんたちだと思います。いろんなたいへんなことがある中で、暗い心になってしまいがちですが、輝きながらやってきたドラえもんたち。そして惑星であるあなたに呼びかけます。「彷徨ってないで、こっちへおいで」

今日は帰ろう。

ここまで頑張ってきたから、今日はもう十分だよ。もうやるべきことは全てやり終えたよ。だから、お家に帰ろう。(ドラえもんがのび太くんに語りかけるように、あなたにも語りかけます。)

すごく肯定してくれる言葉だと思います。Universeの中で一番好きな言葉です。涙が出ます。

いつもあなたはただひとつの輝く世界なんだから。

めぐる過去の向こうから君は

一番不思議だったのは、「めぐる過去の向こうから」ドラえもんがやって来ることです。ドラえもんは未来から来たはず。なのにUniverseでは、過去からやって来る。

これは、きっと、大人になったリスナーにも響くように考えられたメッセージだと思います。もう、ドラえもんやのび太くん達のことを忘れてしまっていた大人である私。暗い心になっている私にやってきたのは、流星のようなドラえもんとのび太くんたちです。きっと。

歌詞以外にも

歌詞以外にもいろんな工夫があります。それを探していくのは「隠れミッキー」を探すのに似た楽しみですね。

例えば、曲のテンポは93bpmだそうです。これはドラえもんの誕生日の9月3日。テレビではスペシャル番組が放映されますよね。

CDのアートワークもドラえもんカラーになっています。

Universeアートワーク

それぞれの楽器のパートも素晴らしい演奏で、技術的にも高度な試みがなされていますので何度聴いても楽しめる楽曲になっています。Youtubeで検索すると、コード進行や各楽器についての分析のある演奏もあります。とても参考になります。

「Universeの歌詞についての記事」のどこが楽しい空旅なのかって?映画では宇宙にでかけていくんですよ。これも空旅です。そして、イマジネーションを広げることも旅なのかなぁ。コロナ禍でお出かけが難しいから、せめて心の翼は広げましょう!

なお、歌詞の表示(アートワークもそうですが)については著作権侵害にあたる(可能性がある)ことも理解しております。関係者の方で、歌詞表示に問題があると考えられたときはご連絡ください。削除します。

4 件のコメント

  • とても興味深かったし、なるほどと思う部分がたくさんあり、更にこの歌が好きになりました。
    ありがとうございました!

    • ありがとうございます。
      藤原さんは、本当に丁寧にこの歌を作ったんだと思います。
      何度聴いても楽しめる奥の深い歌だと思います。

  • “やってきた流星”が、
    のび太とドラえもんの事というのもなるほど!と思いました。

    (という事は、”めぐる過去の向こうから”というのも、昔も出会った事がある、今回は以前の映画のリメイクなのでそんな意味もあるのかな?なんて思ったりしました。)

    また聞きたくなりました。
    ありがとうございました(^^)

    • ありがとうございます。
      リメイクの意味もありそうですね。昔から見ていたドラえもんシリーズの意味も(^^)。
      こんなにすごい歌詞を書ける藤原さんってすごいですよね!

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